※第二部、解説編は目次からお進みください
【音声反訳の内容】
以下は音声の書き起こしです。音声を聞きながら、あるいは聞いた後に確認することをおすすめします。
※本取調べ音声は改変不能なデータファイルで記録・保管されていた。
捜査官: あんまり、だんまりでも、な。何も進まないよ。やったの?やってないの?
(間)
捜査官: あんただけだよ、「やったか」「やってないか」すら、言わないの。「やってない」なら「やってない」っていいなよ。
(間)
捜査官:あの日、あの家の2階にいたんだよな。
佐竹: はい。
捜査官:2階を自由に移動していたんだよな。
佐竹: はい。
捜査官:で、あんたしか院長先生を、殺せなかった?
(間)
捜査官:おい!はっきりしろ、やったんなら「やった」っていえばいいだろうが!
(間)
捜査官:誰かが「やった」って言うまでだんまりか。和木さんあたりが「やった」っていうまで。
佐竹: 彼女はやってません・・・。
捜査官:はっきりしろ!じゃあ、あんたがやったんだな?
佐竹: やりました。
捜査官:(怒声)
佐竹: やりました!すみません、やりました。
捜査官:そうか、はい、じゃあ、続き聞かせて。
佐竹: やりました、
捜査官:どんな感じで?
佐竹: 刺し、ました。
捜査官:ちょっと落ち着こう、順番にいこうか?
佐竹: はい
捜査官:事件のあった日、何をしてた?
佐竹: 和木さんの引越しの準備をお手伝いしていました。それで2階から色々と、荷物をおろして、ました。
捜査官:最初の証言と違う。厳密には?
佐竹: 納戸や屋根裏から荷物を出していました、2階の廊下に、
捜査官:その日の被害者の状況は?
佐竹: 機嫌はいつもより悪かったです。事故で怪我していて、足を少し引きずっていました。
捜査官:その事故って、5日前の事故か?
佐竹: はい。
捜査官: いつもより悪かったってのは?
佐竹: その日、水戸さんが院長の体を支えようとしたら、怒鳴ってました。以前怪我をした時もそう見せないようにするのに、触るな、と。ただ、いつもより力がないというか
捜査官: 弱ってたんだな。
佐竹: はい、弱ってましたし、動けないし、
捜査官:殺せると思った?
佐竹: 殺せると思いました。
捜査官:殺そうと思った動機は?
佐竹: 院長が、和木さんとの結婚を許してくれなくて、どうしても、
捜査官:どうしても?
佐竹: 院長が生きていたら、僕たち幸せになれないと思って。たぶん、院長を殺していなかったら、僕たちが殺されていました。精神とか社会的な、(間)やりました。ぼくが、やりました。
捜査官:殺害時の状況を、順を追って教えて。
佐竹: えっと、どこ
捜査官:和室の扉を開けるところからでいいよ。
佐竹: 和木さんはテレビ電話でおしゃべりに夢中なので、その隙に和室へ入りました。そっと開けたら院長が寝ていて。こちらを向いて寝ていたので、一瞬ドキッとしたんですが、目も覚まさないし、素早く仰向けにして馬乗りになり、布団の上から思いっきり刺しました。
捜査官:だから、ダンボールにつけていたはずの付箋が、遺体の下敷きになっていたんだな。
佐竹: そうだと思います。
捜査官:院長は叫ばなかった?
佐竹: 叫んだと、思います。叫ぶんじゃないかという気持ちで、布団の上から顔を抑えました…
捜査官:残酷なことをするな。ちょっと人より頑固だっただけで、院長は殺されたんだな。
(間)
捜査官: なんにせよ、最低だからな人殺しは。で、その後は?
佐竹: 部屋を出て、(間)また作業に戻って。しばらくすると金丸さんが来て、和室に向かい、遺体を発見していました。それに驚いた振りをして、金丸さんが救急処置をしようとしている中、(間)水戸さん、陽土さんが来て。助からないと分かって警察へ連絡しました。
捜査官:分かった、残念だけど、今の話を自白として受け取らせてもらうよ。いい?
佐竹: はい、大丈夫です。
以上